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7 : ンチャク(コンゴ民主共和国・ブショング族)

ブショング族のアップリケの衣装は幾重にも腰に巻いて使われるものですが、そのデザインの魅力のためにパウル・クレーなどヨーロッパの近代画家たちもこのデザインを作品に取り入れました。「ンチャク」と呼ばれるこのアップリケの衣装をあらためて見ていきましょう。

クバ王国のブショング族

コンゴ民主共和国のほぼ中央、現在のカサイ州に居住するクバ族。約18の民族集団から成ります。 17 世紀にクバ王国が成立しましたが、その中心となったのがブショング族です。王や王族もブショング族が占め、王国の中央に位置しています。

クバ族では伝統的にラフィア椰子の葉の繊維で作られた衣装を身にまといます。それらの衣装はブショング族がアップリケ、ショワ族が草ビロード、ンゴンゴ族が絞りなど、それぞれの民族が独自の技法とデザインを発展させてきました。

ンチャク

クバ族の衣装は男性の「マフェル」と女性の「ンチャク」に大別されます。マフェルは布を赤く染めたり、白と黒の市松模様をあしらったり、宝貝やビーズが付けられたりと華やかですが、それらの装飾は身分に応じて細かい決まりごとがあります。これに対しンチャクには決まりごとがいっさいなく、自由に作られます。アップリケは布をたたいてできた穴に当て布をしたのが始まりと言われています。それにさまざまなモチーフが加わり、創意工夫が重ねられ、絵画のように発展していきました。

作り方

糸はラフィア椰子の葉から作ります。この糸を用いて男性が平織りの布を織ります。ラフィアの葉の長さから、布の大きさは約 60 〜 80 センチ四方になります。織られた布を柔らかくするために濡らして棒でたたいたり貝殻でしごいてなめします。これを 10 枚ほど横につなぎ、さらに巾の狭い布をその上側や下側につなぎ、衣装として基本の形を作ります。刺繍用のラフィアの糸を調製したり、染めたりする作業もあります。アップリケは女性の仕事です。モチーフとなる形をラフィアの布から切り取って縁を折り返し、台地の布の上に置いてデザインを決め仮縫いします。アップリケは輪郭とその内側を二重にかがって縫います。このようにして独特の広がりを持った模様が描かれます。

モチーフ

クバ王国の最盛期は 19 世紀半ばから後半で、王宮には王国内のさまざまな工芸品が集まりました。王宮で使用する器、パイプ、椅子、剣、仮面などが装飾を凝らして作られました。それらの工芸品には斬新な幾何学模様が多く使われました。布や衣装のモチーフはそれらの工芸品に使われているモチーフと共通のものが多く見られます。また 女性の身体装飾である瘢痕のモチーフとも関連づけられています。モチーフには名前と意味があり、布には作り手の女性の物語が構築されていると言われています。

重要性

男性も女性もこれらの衣装を日々作っていきます。非常に手間のかかる作業を要するため、一生の間に数着しか完成することができないといいます。衣装は祭りや儀式の際に身につけられますが、晴れの衣装であるとともに死装束でもあります。亡くなったときにこれらの衣装が着せられ、遺族が弔問を受けるのです。このときに自分の用意できる最も華やかな布で包まれていることが故人の栄誉なのです。

ンチャク  
ンチャク 70 × 530cm (全体は 9 枚はぎ)  
ンチャクを着たブショングの女性たち  
祭りでンチャクを着たブショングの女性たち  
   
ンチャク
70 × 78cm
カムウッドという木からとれる
染料で赤く染められたもの。
染料が高価なため赤い染めは
王族の女性だけに許されます。

ンチャク
71 × 53cm   生成りと赤のボーダー。
ンゴンゴ族のアップリケ
70 × 60cmクバの中でも
ンゴンゴ族のアップリケ。
ブショング族のアップリケと少し趣きが異なります。

ンチャク
75 × 58cm
ンチャク
73 × 62cm
カンマの形のモチーフは
“ shina mboa ”と呼ばれています。
犬の尻尾という意味。
参考文献
「クバ王国のアップリケと草ビロード アフリカンデザイン」渡辺公三、福田明男、里文出版、 2000 年
「 Weaving in Africa 」 Karl-Ferdinand Schaedler, Panterra Verlag, Germany, 1987
「 African Textiles 」 John Picton & John Mack, British Museum Press, 1989
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