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4 ・ はしご(マリ・ドゴン族)
ドゴン族の人々は家の屋根や穀物庫の入り口まで登るときにはしごを使います。はしごといっても普通私たちが思い浮かべるものとは形が異なります。ドゴン族のそれは、アフリカを飛び出して私たちの身近に置いたとき、力のある彫刻の作品のように感じられるのです。
ドゴン族について
ドゴン族はマリ中央部バンディアガラ山地に住む農耕民で人口は約 25 万人。イスラム化から逃れるため、断崖の多いこの地方に住むようになりました。独自の宇宙観、世界観をもち、天地創造をはじめとする数多くの神話が語り継がれています。彼らの祭りには神話にもとづいたさまざまな仮面が登場し、その壮麗な仮面ダンスはよく知られています。
はしご
ドゴン族は泥で造られた四角い形の住居に住んでいます。屋根の上に登るときに使われるのがこのはしご。屋根の上は穀物を干す場所でもあります。はしごは、一本の丸太に足がやっと乗せられるぐらいの面積を 30 〜 40cm 間隔に刻んで作られます。壁に立てかけて安定するよう、先端が枝分かれして二股になった木を利用しています。穀物庫の入り口まで登るとき、急勾配の断崖を登るときにも使われ、長さも用途に応じて、 1 メートル強のものから 3 メートル近いものまであります。実用のものでありながら美しいと感じるのはドゴンの人々の精神性からでしょうか。
ミニチュアのはしご
はしごはドゴンの周辺部族やブルキナファソの部族も使用しますが、ミニチュアのはしごはドゴン族だけに見られます。大きなはしごと形は同じですが、長さが30〜50センチぐらいで実用のものではありません。ドゴン族の家の中には祭壇がありますが、そこにはさまざまな小さな人物像、そして最も重要とされている土器が置かれます。その土器の中には家長の魂が存在すると考えられています。ミニチュアのはしごはこの土器に寄りかかるように置かれ、その土器の持ち主が死んだとき、その魂が死後の世界に昇って祖先たちのところへ行けるよう導く役割を果たします。
大きなはしごの表面は風雨にさらされて枯れた風合いがある一方、人の手や足が触れる部分は黒光りしています。これに対してミニチュアのはしごは屋外に置かれることはなく、触れられることもほとんどありません。儀式の際に穀物の汁などがかけられます。
参考文献 「 African Forms 」 Marc Ginzberg, Skira, 2000 「 Africa Adorned 」 Angela Fisher, Collins Publishers, 1984 「 Dogon 」 musee Dapper, 1994