かつて ひとは 自然とともに生きるなかで
植物の繊維や動物の毛を糸に紡ぎ、織り、洗い晒し、染めていました。
模様を描き、刺繍を施し、工夫を凝らし、技巧を高め
すべてが日常の暮らしの営みのなかにありました。
そして
インドには今なお生き生きとその手仕事を見ることができます。
素朴であり、巧緻であり、
長い歴史が育んだ「ひとの手」による多様な伝統。
効率や均一性が求められる時代であっても
さまざまな「ひとの手」を介し 自然を介し
「揺らぎ」という「質」の価値も見せてくれます。
手仕事の来た道を 手仕事の続く道へとつなぐこと
私たちがインドを訪ねるたびに胸に刻む思いです。
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カンタ
インドでは刺子刺繍の布を総称してカンタと呼びます。東インドでは動植物や日常風景をモチーフにした模様刺子、北西インドでは直線刺子ラリーキルトが作られています。
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ブロックプリント
柄を彫り込んだ木の塊(木版ブロック)を布に押し当てて一柄一色ずつハンコを押すように色を重ね、幾度も水洗いをし、太陽で乾かしながら手作業で作り上げる模様染めです。
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カディ
手紡ぎ手織りの木綿布です。手紡糸は細く柔らかく撚りむらがあり、吸湿性、速乾性のある四季を通して心地よいカディの特性となります。インド独立運動の父ガンディーは国産の手織り木綿を「Fabric of Freedom」と呼び自由の象徴としました。以来カディは全インドの誇り高き布となっています。
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ラクノウ刺繍
ガンジスの流れる土地、ラクノウ地方の刺繍技法。花や蔓草をモチーフにした繊細な手刺繍は女性の貴重な収入源でもあり、母から娘へと受け継がれていく伝統のハンドワークです。
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ジャムダニ
本来は極薄木綿に細い手紡糸を使って模様を織り出す難しい技法です。
かんかんでは麻、絹、ウール素材にもこの技法を用いています。